Greg & Junko Jorde Farms
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『大平 原からの便り』 
第 四回:逃げ出した牛たち

毎 日世話をしているため牛たちも私達にとてもな ついていて、姿を見れば餌 をもらえるかブラシをかけてもらえるかのどちらかだと思っているようで、すぐに寄って来ます。訪ねてくる人達も「あんたのとこの牛たちは本当におとなしく て人なつっこいねえ」と言ってくれるのですが、ここまでくるのにはとても長い道のりがあったのです。

私 達が牛を飼い始めた1996年の初春は、必要 なフェンスは整っていない、私達は牛など扱ったことはない、20頭の牛たちはyearlingと呼ばれる一歳牛のため(主人のグレッグに言わ せれば、人間でいうティーンエイジャーのようなものとのこと)落ち着きがない、それまでにいた農場は頭数が多いので牛たちは人間と密な関係をもったことが ない、という良くないことが起きるのが目に見えているようなスタートでした。それでも何 とか信頼関係を作り始めていた五月の上旬のこと、一頭の牛が足を引きずっていることに気付きました。古い釘でも踏んで炎症を起こしているのではないかと思 い、何とかして治療をしなければということになったのですが、牛を捕まえるすべも、動けないように押さえるすべもありません。
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牛たちはブラシをかけられるのが大好きです

とりあえず近く の公共放牧地のマネージャーに電 話して投げ縄を借りることにしました。クリスというその人も私達が新米のファーマーであることを知っていて「何、子牛が足を怪我したんだって?体重100 キロ位なの?」と心配そうに聞いてくれたのですが、グレッグが「いや300キロはあると思う」と言ったとたん「オー、ノー!」と言わんばかりの様子でし た。とにかく家に帰りグレッグはゴミの焼却用にしているドラム缶を相手に投げ縄の練習を二、三回してこれで準備ばっちりだというので牛を捕まえることにし ました。今になってみればなんてバカげたことだったんだろうと思うのですが、その時は「ねえ、それで縄を掛けたらどうするの?」の質問に対する「そうした ら一緒に縄をもってしばらく走り、近くの木に縛り付けるよ。怪我をしててあんまり早く走れないから大丈夫だよ」との答えに納得してしまったのでした。

私達が牛たちの そばへ行くと、むこうもすぐに只 事ではない雰囲気を感じ取り逃げ始めました。怪我をしているはずの牛も一緒になって逃げ、二回ぐらいもう少しで掛かりそうになったのですが、そのうち自分 が狙われていることに気付いてグループの真ん中を走るようになってしまったのです。あたりは倒れた木や大きな石がちらかっているところでとても走りにく く、私がそろそろだめかなと思いかけた頃、すごい勢いで私の立っているゲートの方に向かってきたのです。ゲートと言っても針金一本のエレクトリックフェン スで、興奮して勢いづいた牛たちの前では何の威力もありません。グレッグが「とめろーっ!」と叫んだのですが、走ってくる何百キロの牛たちを相手にそんな ことができるわけもなく、5頭がフェンスの外へ逃げていってしまったのです。とりあえず残った牛たちを落ち着かせ、林の中へ消えてしまった5頭を捜しに いったのですが全然見つかりません。さらに悪いことには、足を痛めた牛は結局捕まえられずに終わったのです(幸いにもその牛は逃げませんでしたが)。その 後夜中の十二時半まで捜したのですがまったく成果はなく、近くにある160エイカー(約70ヘクタール)の野生動物保護区に入ってしまったら二度と戻らな いかもしれないと話しながら私は泣く泣くベッドにつきました。

翌日グレッグが またクリスに電話をして「ハウ ディ、パートナー(カウボーイの挨拶)今度は馬を貸してくれないか。牛が逃げちゃったんだ」と言ったら大笑いして「そうなるんじゃないかと思ったんだよ。 でもたぶんそのうち帰ってくるから心配要らないよ」と言ってくれました。その後郵便局に電話して(村中の人が郵便をそこで受け取るので)私達の牛が逃げた ということを伝えたら、みんながつぎつぎ電話をしてくれて「○○さんの畑の近くで見かけた」とか「どこそこの道を南に向かっていった」とか教えてくれ、 「僕の牛も逃げたけどちゃんと戻ってきたから大丈夫」と慰めてくれる人もいました。

結局五日ほどし て近くの畑にいるのを見つけ、餌 をもっていたっらやっと家に帰る気になったのか後を着いて仲間のところまで戻ってきました。牛たちに泣かされたのはこれ一度ではないのですが、今になると こういう手のかかる経験もしているから余計かわいさが増すような気がします。ちなみに牛の足はそのうち自然に治ってしまいました。



      
第三回:牛との生活                   第五回:観那誕生




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