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『大平 原からの便り』 
第九回:秋の出来事

サスカチュワン州のなかでも私達の住んでいる地域は木が多く生えているため、毎年秋になるとポプラの葉が金色 に変わりとても美しいものです。しかし今年の秋はとても変な天気が続いていて、木々の葉はいきなり茶色になりどんどん散ってしまうのです。早くて厳しい冬 の到来の前触れでないことを祈っています。変な天候と言えば去年の秋も穏やかな日々が続いていたにもかかわらず、10月中旬の感謝祭の週末にいきなり50 センチもの大雪が降り驚いたことを覚えています。幸いにもそれは根雪にならずその後はクリスマス後まで雪が降らなかったため過ごしやすい冬でした。この時 期になるとみんな今年の冬はどんな冬だろうということにとても関心を示しいろいろな予想が飛び交います。様々ないい伝えから迷信のようなものまであり、ど れが本当かは冬がきてみるまで分かりません。 skletter9
1998年10月の感謝祭の週に50cm程の大雪が降りました。



秋は子牛の離乳の季節 でもあります。春に生まれ今まで母親と一緒に放牧地にいたのですが、この時期になれば干し草や穀物だけで十分自立していけるし、母親の方も来年の春に生ま れる次の子牛のためにエネルギーを貯えなくてはいけないため、別の場所に移すのです。分けてしばらくは昼夜なくお互いにフェンスの向こうとこちらでモー モー鳴きあい、5日目位になると声もかすれてしまっていて仕方のないことだと分かっていてもとても可哀相になります。特に子牛はこのストレスから病気にな ることもあるので、離乳させるときは比較的気候が穏やかなときを選ばなくてはいけません。しかしこういう時に牛の性格が分かるようで、フェンスのそばに付 きっ切りで自分の子牛を呼んでいるものもいれば、餌場から動かず、干し草を口いっぱいにほうばりながら時々モーというものもあり、そういう牛には「あんた ちょっと無関心すぎない?」とこづいてやりたくなります。

 
そ れでも平均して1週間もすればショックから立ち直るようで、その後は何もなかったかのようにお互いのことを忘れ去ってしまうのです。この辺があまりにも あっさりしているのでちょっと拍子抜けしますが、そのほうが私たちにとっても気が休まります。また子牛を親牛から分けることによって、例えばそれまで母親 のそばを離れず私達に対して臆病だった子牛も私達と接する機会がふえるため慣れてきてすぐに寄って来るようになります。そうするともともと好奇心旺盛な子 牛たちのことですから、私達の着ているもの、持っているもの、やっていること全てに興味津々で、近付いてきては匂いを嗅いだりなめたりします。今度は私達 が仕事をしようにもそばを離れず、「何やってるでえ、わたしにもみせてや(なぜか遠州弁で喋っているような気がします)」と言いながら集まってきて私達の 顔のすぐ近くに荒い鼻息をかけ、手袋をべちょべちょになるまでなめたり、工具を食べようとしたりするので始末におえません。以前は近付いて触ろうとすると すぐ逃げたのに今はつついたり揺すったりしても立とうともしません。まあそれだけリラックスしているということなのでしょう。

 
今 年の秋は牛小屋の大改造でたいへんです。もともとここにあったものはあまりにも古ぼけていて役に立たなかったので2年前すべて新しくした のです。しかし作ってみてからこれは機能的なデザインではなかったということが分かり、またやり直さなければいけなくなったのです。何事も初めてなので試 行錯誤の連続ですが、その度ごとに本当に自分たちが求めているものが何かということがよりはっきりしてくるような気がします(その間のイライラは表現し切 れないものがありますが)。今回改造した牛小屋こそ私達が真に求めていたものであることを期待します。



      
第八回:家庭菜園の収穫                   第十回:五匹の子ブタ




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